2023年2月6日、トルコ・シリアで発生した地震により多くの人が命を落とし、多数の家が倒壊しました。
この惨事は、再び自然災害の恐ろしさを思い起こさせました。
最近の地震や台風による被害は以前よりも大規模で、その影響や被害の混乱が大きくなっているように感じます。
精度の高いドローンやスマホなどの普及によって、被災状況を詳細に把握し広く伝えられるようになったこと、またそれだけでなく、私たちがあらゆることを電気に頼りすぎて、災害が起きると何もかもが止まって身動きがとれなくなってしまうというのも混乱を大きくしている要因です。
天災は、思いがけずやってきます。
多くの人は「自分は大丈夫」と考えているかもしれませんが、「自分も被災する可能性がある」ことを認識しておくことが必要です。
いざ被災したときには、ショックや喪失感、虚しさなどのために、どうしても対応に遅れてしまいます。
そしてそれは、大切な小さな家族を危険にさらしてしまうかもしれません。
私は、2018年9月6日の「北海道胆振東部地震」で猫たちとともに被災しました。
そのときのことを思い出しながら、今後被災した場合に備えておくべきこと、 被害を最小限に抑えるために日ごろ心がけていることなど、思いつくことを綴ってみようと思います。
東日本大震災の教訓はどこへ……
今から20年前の「東日本大震災」のとき、北海道も相当な大きさで長い時間揺れて、地震の規模の大きさが想像できました。
ニュースでは、恐ろしい津波の様子と、時間を追うごとに増えていく被災者の数を映し出していました。
あまりの悲惨さに目を背けそうになりながらも、ただただ様子を見守るばかり。
当時、出張でたまたま仙台市にいた弟が、北海道へ戻ることができたのは1か月も経ってからでした。
戻った弟から、震災の瞬間は仙台港周辺に居合わせ、石油コンビナートから上がる黒煙を尻目に、命からがら逃げたことを聞きました。
また、その際にすっかり形を変えてしまった建物や道路などを映した写真を見せられて、その時には震災の恐ろしさを理解していたはずでした。
そこから7年しか経たずに、北海道胆振東部地震に見舞われることになりました。
震災の恐ろしさ
ドーン!!
という突き上げるような振動と、もの凄い音に驚いて目が覚めました。
すぐに地震だと気づきましたが、今まで感じた揺れとはまるで違っていました。
次々にやってくる大きな揺れに、立ち上がることができず、
それどころか、枕元にあったはずのメガネが見つけられず、オロオロしていました。
ようやく揺れが収まり、メガネを見つけて周りをみると、ベッドの上の照明や本棚の本はすべて床に落ちていました。
慌ててリビングへ行くと、二匹の猫の近くで寝ていた妻と娘は泣きながら猫を抱え、たまたま帰省中だった息子が、倒れかけた背の高い棚をかろうじて支えていました。
古いタイプの大型のプラズマテレビを固定していた耐震用の鎖は、まるで用をなさず、落下したテレビは床に穴を開け、画面のガラスが飛び散っていました。

食器類を入れていたリビングボードや食器棚自体は、耐震対策をしていたため倒れはしなかったものの、ガラス製の扉が粉砕され、お気に入りのグラスや思い出の皿など、ほぼ全てが無惨な姿でした。

猫たちが寝ていたケージが倒れなかったこと、そしてテレビやボードの近くにいなかったのが不幸中の幸いでした。
震災のあとに怖いこと
幸いなことに怪我はありませんでしたが、倒れた物の始末や費用的な損失を考えると目の前が真っ暗でした。
しかし、それ以上に大変なこと、それは、電気が点かない、水が汲めないという、ライフラインの問題でした。
電気が止まると、マンションの場合給水ポンプも止まるので水が出なくなり、もちろんエレベーターも止まります。
水……
風呂は多少我慢できたとしても、トイレはそうはいきません。
飲み水だってなんとかしなくてはなりません。
当然、猫用の電動給水器も止まったままです。
私の家は11階にあって、子供たちが外の様子を見に行った際、近くの小学校で水道を開放してくれたことがわかりました。
家族分の水を確保するため、家族全員協力して階段を降りて水を汲み、また上がることを繰り返しました。
その合間には猫たちに危険がないよう、飛散ったガラスの破片を塵取りでかき集め、かろうじて無事だった食器類や調理用具などを片付けました。
私は、町内会の役員もしていたので、お年寄りの安否確認と、水、食料の確認をしに何度も訪問しました。
ワンちゃんや猫ちゃんと住んでいるお年寄りも多く、様子を見に行くと、ワンちゃんを抱っこしながらホッとした顔をみせていました。
安全確認と水汲みが終わって、食料と飲み水の確保を急ぐことにしました。
近くのコンビニへ行ったものの、すでに飲み物や食べ物、更には電池や携帯電話のアクセサリー類まで、棚には一切残っていませんでした。
少し離れた大型スーパーに行くと、そこも長蛇の列。
どうやら10名単位で順番に入店するようになっていて、結局、6時間並んで、ようやく水3本とカップラーメンを数個ほど買うことができました。
猫たちの食事に関しては、大袋でストックしていたため助かりました。
ただ、水は購入しなくてはいけません。
そこでわいた疑問が、「猫にミネラルウォーターを与えちゃいけなかったかな……?」
実際には、コンビニやスーパーで見かける一般的なミネラルウォーターは、「軟水」なので問題ないのです。
気を付けなくてはいけないのは「硬水」で、念のため購入前の確認は必要です。
耐震対策の必要性

もうひとつ、ペットがいるいないにかかわらずですが、事前に行うべきなのが、耐震対策です。
我が家では東日本大震災の直後に、家具類は全て突っ張りポールを設置して固定していたはずでした。
唯一、うっかり突っ張り忘れた細長の棚が案の定倒れてきたのです。
奇跡的に帰省中の長男が抑えてくれて、ギリギリのところで危険は回避できました。
猫たちのために作っていたキャットウォークは2×4材の突っ張りで作っていて、こちらもビクともしませんでした。
ケージも突っ張りのキャットウォークと鎖で固定していたため、ケージ内で寝ていた猫たちも、ケガはありませんでした。
いくら反射神経のいい猫でも、ケージや家具が倒れたら、無事では済まなかったかもしれません。
食器棚類は、突っ張りのおかげで倒れはしなかったものの、ガラスの扉にストッパーをかけられなかったために、揺れとともに扉が割れ、中身が飛び出してしまいました。
突っ張りだけでなく、扉も動かないように「扉ロック」なるものも販売されているので、ぜひ対策しておくべきだと思いました。
関連記事:【賃貸OK簡単DIY】耐震性も高いキャットウォークの作り方
備えあれば・・・
防災用品は、今ではスーパーやホームセンターなどでも買うことができるし、町内会や管理組合から配られているところもあるのではないでしょうか。
しかし、「ペットのための備え」というのは飼い主自身が行うものです。
どれぐらいの期間の用意が必要かは、それぞれの考え方次第と思いますが、水、食料、トイレ用品は準備しておきたいです。
我が家の猫、ヨタロウはストルバイト尿路結石のため、療法食が欠かせないこともあって、十分にストックしていました。
もし、フードがなくなってしまったら、被災中に購入するのは難しかったかもしれません。
そういう意味で、特定の疾患を持っているペットのために、フードだけでなく使用している薬やサプリメント類も補充しておくべきだと思います。
くれぐれも、賞味期限にはご注意を。
ペットのためにも、準備しておいた方がよいと思うものを以下にまとめます。
一般的なものも含みます。
・必要に応じて、薬やサプリメント
・キャリーバッグとハーネス
・ウェットタオル、ティッシュ
・トイレシーツ、猫砂、ゴミ袋
・電池や手回しで充電できるLED照明
・電池
・可能ならばバッテリー、発電機など
食料以外に真っ先になくなるのは、スマホの充電ができるモバイルバッテリーや電池関連でした。
電池などは、あればあるだけ役に立つと思います。
ペット用の自動給餌機や自動給水機は、停電時のバックアップとして、電池が利用できるものもあります。
ペットと災害を乗り越える難しさ
この震災のときは、まだ暖房をつける前の時期だったのですが、もし真冬に起きた場合には、命の危険もあったかもしれません。
また、私たちは避難所生活を強いられることはありませんでしたが、これまでの災害でペットと非難しなくてはならず、とてもつらい思いをされた方もたくさんいると思います。
環境省では、東日本大震災や熊本地震の被災状況を踏まえて、平成30年3月「人とペットの災害対策ガイドライン」を策定しました。
ここに書かれていることを引用すると、
ペットの飼い主は、平常時に災害への備えをし、発災時は本人や家族の安全を確保した上で自
助(自己の責任)の下でペットと同行避難をすることが理想。
としています。
基本的には「ペットを一緒に連れて避難すること」となっています。
「万が一に備えて、ペット用の備蓄品を確保しておくこと、ペットの同行避難に必要なしつけや健康管理を行うことも飼い主の責務」
「避難所や応急仮設住宅では、トラブルが生じない様、ペットを飼っていない人に配慮して、ペットの健康を安全を確保すること」
事前の準備はしっかり行い、避難する際にはペットを飼っていない人にも迷惑をかけないよう、配慮が必要です。
災害が起こった時に飼い主がペットと一緒にいるとは限らないことや、人命を優先させるためにやむを得ずペットを自宅に残して避難せざるを得ない状況もあること、また、不測の事態によりペットとはぐれてしまうケースなどがあることも想定しておく必要がある。
そういった、最悪の状況も考えられるのです。
必ずしも避難所でペットを連れて一緒に過ごせるとは限らないのです。
ガイドラインによると、災害時のペット用の避難所や一時預かりに関することは、各自治体で対策を検討することになっています。
事前に各自治体へ確認しておく必要があります。
自治体のペットの災害対策
例えば札幌市の場合、「犬と猫の防災手帳」を作成していて、ペットと暮らす飼い主に向けて、日ごろからできる災害に向けての備えや被災時の支援体制について情報をまとめています。
札幌市内各区役所、保健センター、札幌市保健所、札幌市動物管理センターで配布されている他、札幌市のホームページからダウンロードすることができます。
これによると、札幌市の備蓄物資にはペットフードは含まれないため、飼い主が用意する必要なこと、また避難形態の判断として家の被害状況に応じて4つのケースを挙げています。
②車の中で飼養
③施設や知人に預ける
④指定避難場所での飼養
指定避難場所については、必ずしもペットと一緒にいられるわけではなく、避難所によりペット飼養場所やルールが異なることから、その都度確認が必要になります。
ペットを非難させなくてはいけない状況となった場合には、飼い主がそれぞれ最善の決断をしなくてはならないことは言うまでもありません。
最後にあらためて、日ごろから行っておくべき対策をまとめます。
・ペットが行方不明にならないための対策(鑑札、迷子札、マイクロチップ)
・ペット用の避難用備蓄品の確保(餌、水、トイレ用品、キャリー、薬など)
・避難先やペットの預け先の確保(遠くの親族や友人に依頼するなど)
・ペット情報の携行(名前、住所、写真、治療やワクチンの記録など)
・避難ルートの確認や避難訓練
ペットを飼っていて被災するというのは大変なことです。
なんでもない時に考えるのはなかなか難しいことですが、いざというときのための備えは必要です。
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