猫ちゃんに多い尿路結石。
ストルバイト結石とかシュウ酸カルシウム結石とか……

いわゆる「下部尿路疾患」と呼ばれる症状のひとつで、
ドラッグストアやホームセンターのペットコーナーでも、「下部尿路の健康維持に配慮した」って書いてあるフードやおやつを目にすることがありませんか?

ストルバイトって?
うちの猫ヨタロウが、下部尿路疾患のひとつである、「ストルバイト結石」と診断されたのが、生後半年のことでした。
診断の後、療法食での治療を開始。
無事回復したのですが、その後も再発したり、いろいろありました。
現在は、お水や食事に気を付けて、元気に過ごしています。
このヨタロウの経験と、最新の研究結果をもとに、尿路結石がどんなものか?を簡単にわかりやすく解説します!
尿路結石、下部尿路って?

まず下の絵は、猫ちゃんのおしっこまわり部分です。
腎臓と尿管を「上部尿路」、膀胱と尿道を「下部尿路」と区別して呼んでいます。
膀胱や尿道あたり、つまり「下部尿路」に問題のある状態が「下部尿路疾患」、そこに結石が詰まったり、傷つけたりすると「尿路結石症」と呼ばれたりします。
引用参考:MSD MANUAL|Urinary system in female cats
尿路結石にはどんな種類があるか?

そもそも結石って何?って話なのですが、人間にもよく見られる、経験された方ならわかるかもしれませんが、とっても痛いヤツです。
なぜか体の中に石の塊ができてしまうんです。
猫の場合、結石症は上部尿路よりも多くは下部尿路に発生します。
結石は作られる成分によって以下のようないろいろな種類があるのですが、圧倒的に「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」が多いです。
これらの成分が体の中で作られ、くっついてどんどん大きくなっていくのです。
下の写真は、ストルバイトやシュウ酸カルシウムの結晶様子です。
これらがさらにくっついて大きな塊になります。
図. 左:ストルバイトの結晶、右:シュウ酸カルシウムの結晶
引用:VetFolio|Feline Struvite Urolithiasis,Calcium Oxalate Urolithiasis
参考:Lucy Kopecny|Urolithiasis in cats: Evaluation of trends in urolith composition and risk factors (2005-2018) omron|結石はどうしてできるの?
尿路結石ができるとどうなる?

結石ができると、おしっこがスムーズに流れなくなるため、残尿感や痛み、血尿が出たりします。
そんなときの猫ちゃんのしぐさや行動を下にまとめます。
トイレにずーっとこもる。
病状によっては、トイレのたびに痛そうにお尻を上げたり、鳴いたりする。
お尻回りをなめることが多くなる。
おしっこのあと猫砂を確認すると、おしっこの量がほんの少し、あるいはまったくない。
おしっこの跡が赤い(血尿)。
さらに、膀胱の粘膜が結石や結晶によって傷ついて、そこから細菌感染を起こすこともあります。 そして、結石がつまっておしっこがでなくなってしまうと、急性腎不全の全身症状がおこるなど危険な状態に陥る可能性があります。
結石ができる理由は?

結石ができる要因は、完全に解明されていませんが、以下のものが関わっていると考えられています。
代謝異常
尿pH
品種や性別、年齢によるもの
感染症
この中でも尿pH(ペーハー)、つまりおしっこのpHが偏ることで結石ができることがわかっています。
pHって、水素イオン濃度のことですが、小学生の頃、リトマス試験紙で酸性か中性かアルカリ性かを調べた、アレです。
おしっこのpHががアルカリ性に傾くことでストルバイト結石ができ、逆に酸性に傾くことでシュウ酸カルシウム結石ができやすくなります。
猫の理想的なおしっこのpHは 6.2 から 6.4 です。
尿のpHは、尿路に作られる結石の種類に影響を与えます。
尿の pH が 7 を超えるとストルバイト結晶ができ始め、pH が 6 を下回るとシュウ酸カルシウム結石ができ始めます。
一般的に、ストルバイトは若い猫が多く、シュウ酸カルシウム結石は老齢の猫での発生が多いといわれています。
猫が年を取ると、腎臓でうまくカルシウムを吸収できなくなって、カルシウムの結石ができやすくなることが一つの要因と考えられています。
参考:Kitasato Univ/IWAI Satomi|Ureterolithiasis in Cats、Brit|URINARY TRACT DISEASES IN CATS、TVP|Feline Struvite and Calcium Oxalate Urolithiasis
罹りやすい猫種はある?
遺伝的要素として、罹りやすい猫種が研究によりわかっています。
一般的に尿路結石は、猫の種類、性別に関係なく発症の可能性があるといわれていましたが、2014年麻布大学附属病院での、尿路結石と診断された猫とその品種についての調査によると、雑種では罹患する数は少なく、純血種の中でヒマラヤン,アメリカンショートヘアー,そしてスコティッシュフォールドの順で罹患しやすいという調査結果が得られました。
また、年齢には関係なく、オスメスではオスの方の尿道が細く長いことから、結石がつまりやすいこともわかっています。
我が家のヨタロウは、まさにオスのスコティッシュフォールドです。
出典:麻布大学附属動物病院|麻布大学附属動物病院における猫の尿管結石の好発品種に関する検討
結石と診断されたら
結石と診断されてしまっても、適切に処置すれば治ります。
ストルバイト結石の場合は、療法食でおしっこのpHを調整して、おしっこ中の結石を溶かすことが期待されます。
ただ、ストルバイト結石が大きすぎたり、できた結石がシュウ酸カルシウム結石などの場合は手術で取り除くことがあります。
その他、場合によっては投薬治療が始まります。
しばらくの間、療法食を続けて、尿検査や超音波検査等を実施し、結石の大きさ、量などを確認します。
治ったらどうする?療法食は食べ続ける?
治った後もしばらくの間、尿の検査を行って、結石が完全になくなっていれば一般食に戻せる猫ちゃんもいます。
ここで心配なのが、再発するかどうか?この先も療法食を与え続けなくてはいけないか?という問題だと思います。
結論から言うと、
なんです。
そのため、必ず主治医の指示に従ってください。
療法食を自分の判断で止めたり、食べさせたりするのは絶対ダメです!!
うちのヨタロウのように、療法食をやめるとストルバイトが再発してしまうケースもある一方で、療法食を食べ続けることで、おしっこpHが偏り過ぎたり、太ったりするリスクがあります。
病後、与えるべきフードはいろいろあって、獣医師指導のもと、それぞれの猫ちゃんに合わせたケアが必要になります。
我が家には、ストルバイトのヨタロウの他に、健康優良児のアメショのショコラがいます。
ヨタロウがショコラの一般食を盗み食いしないように、食事の場所を別々にしたりといろいろ苦労していますが、これもひとえにかわいい猫様のため。
これからも猫たちが元気でいられるように、飼い主としてできる限りのことをしていきたいです。
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